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【赤ちゃん学】ママに誤解を与えるベビーのサイン

ベビーのサインに必要以上に不安にならないで


生まれたばかりのベビーは、じつにさまざまなしぐさをします。そのしぐさを見ていると、親の側はさまざまな解釈をしますが、必ずしもそれが当たっているとは限りません。ベビーのしぐさのなかには、親の勘違いを招いてしまうサインが多く含まれています。
たとえば代表的なしぐさが「指しゃぶり」。生後2ヶ月くらいからよく見られますが、チュッチュッと指を吸う姿を見ていると、「愛情が足りず、欲求不満なのではないか」とか、「おっぱいやミルクが足りず、お腹がすいているのでは」などと、大人はいろいろな理由を想像します。
指しゃぶりについて、私は「ベビーは口や舌を使って自分の手を知覚しているのではないか」と考えています。

ベビーは、生まれて3~4ヶ月ころになり、首がすわってくると、仰向けではなく縦抱っこを要求するようになります。視界が広がり、周りの世界を見ることで、次第に自分の存在を確認していくのでしょう。
同じ時期、自分の手で顔を触るしぐさをしたかと思うと、手を伸ばして足をつかんだり、舐めたりするようになります。このように、ベビーは自分の手や足を使って身体感覚を発達させ、自分の存在を確かめながら成長していきます。

指しゃぶりも自分を確かめるしぐさのひとつにすぎず、「愛情が足りない」とか、「お腹がすいている」というサインとは限りません。
その後、生後9ヶ月から10ヶ月くらいになると、目の前の世界だけでなく、「自分の後ろ側にも、どうやら世界があるらしい」ことに気付き始めます。

10ヶ月前後のベビーをもつママから、「子どもが後ろにゴンゴンと頭をぶつけます。ストレスがたまっているのでしょうか。それともどこかおかしいのですか?」とよく質問されるのですが、そうしたしぐさをさかんに行なう時期と、頭や後方の存在を意識し始める時期がちょうど一致することから、このふたつは関係があるのではないかと考えています。ベビーは、自分の頭をつかって、後ろにある世界を確かめているのです。
だとすると、こうしたベビーの不可解なしぐさを、何でもストレスや欲求不満と結びつけて、親が育児に自信をなくしたり、不安を感じる必要はないわけですね。 

「泣いたら授乳」がベビーの体重増加を招く


ベビーが親に誤解を与えるサインは、これだけではありません。「新生児微笑(生理的微笑)」も、そのひとつ。ママの顔を見て、にっこり微笑んでいるかのように見える表情は、親としては幸福感に満ちた気持ちになりますね。
しかし、ベビーにしてみれば、嬉しいわけでも、幸せなわけでもありません。ただ単に微笑んでいるように見えるだけです。じつは、こうした微笑は胎児のときから行なっており、親の顔を見て笑っているわけではないのです。

同じように、「泣く」というしぐさも、生後1ヶ月ほどは、とくに意味がないときがあります。親は「お腹がすいているから泣くのだろう」と思い、授乳をします。すると、ベビーは乳房に吸い付き、おっぱいを飲みます。その結果、ママはベビーが泣くたびに授乳し、ベビーの体重が増え過ぎてしまうことになります。
このごろ、生後の1ヶ月検診で、丸々と太ったベビーに出会うことが少なくありません。最近も、生後1ヶ月で4・7㎏もあるベビーに出会いました。ママに指摘すると、「お腹がすいていると思って、泣くたびに授乳していました」と言っていました。
しかし、生後1ヶ月くらいまでのベビーの哺乳は、ほとんど「反射的」です。お腹がすいていなくても、口にものを入れられると勝手に吸ってしまうのです。飲みたいだけ飲ませれば、当然、ベビーは太りすぎになってしまいます。


子育てとは、誤解や勘違いを一つひとつ埋めていく作業


では、一体なぜ、ベビーはこのように誤解を与えるサインを送るのでしょうか。
それは、親とコミュニケーションを図るために、本能的にプログラミングされたしぐさではないかと思うのです。口角を上げ、笑っているような表情を見せると、親の愛情を獲得することができます。親の意識を自分に向け、養育してもらうために備わった本能というわけです。

ベビーのいろいろなしぐさを観察していると、「育児というのは、そもそも親の勘違いから始まるのではないか」と思わずにはいられません。その勘違いの必要性を、私はこんな風に考えてはどうかと思うのです。

たとえ、ママのお腹のなかに10ヶ月間いた特別な存在であっても、ママと子どもとは、しょせん別々の人間です。自分とは異なる存在であるママの愛情をつなぎとめることは、生きていくうえでとても重要なことだと、ベビーは本能的に知っている。だからこそ、微笑や泣きといった親の愛情を引き出すための能力を備えて生まれ、けなげに笑って見せるのかもしれない、と。

ベビーのしぐさや行動がよくわからないときは、まず普段の生活のなかで、あらゆるしぐさを観察してみてください。そうすると、さまざまなしぐさとの比較で、そのしぐさが、どんな意味を持つのか見えてきます。

たとえば、言葉が出る前の子どもはよく親を叩いたり噛んだりしますが、それは言いあらわしたくても、言葉にできないもどかしさゆえのこと。それがわかれば、「そんなに伝えたかったんだね」とベビーの気持ちがわかるのではないでしょうか。

誤解をさせるベビーのしぐさに対して、親が一方的に「ベビーのことは、何でもわかる」と自意識過剰になったり、反対に「何もわからない」と投げ出すのではなく、ベビーのしぐさをよく観察することで、誤解や勘違いを一つひとつ埋めていくことが大切です。そうやってコミュニケーションを重ねていくことで親子の絆は深まっていきますし、それこそが、子育てではないでしょうか。
公開日:2015年01月05日

Navigator 【監修】小西行郎先生

日本赤ちゃん学会理事長。同志社大学 赤ちゃん学研究センター教授。

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